スラダンジャンルでSSを一時間で仕上げる「ワンライ」に参加してみました。
#SDワンライ
— 稀腐人@マレフィ (@smakichi2019) 2021年3月17日
過去に薄本を創っていた者です。今は別ジャンルにいますが是非とも参加させていただきたく参上しました。宜しくお願いします。【約束 腐向け 仙越】 https://t.co/pi6QdB8sTT
本来なら流花でいきたいところだったのですが、一時間という制限時間の中でまとまった話を創るには仙越の方がやりやすいと思いこちらに。幾つか提示されたお題に沿って書くのですが、こんなんでいいのかと不安になりまして、メインのお題が『約束』、それ以外に『大人の階段登る』『君のその〇〇のせいだよ』の二つも文中に取り込むという、苦し紛れなものに。表紙は過去絵をコピー・アレンジして簡単作成(雑)しました。
「だーっ! 遅い!」
横浜駅改札前、約束の時間を過ぎること三十分。イライラが高じて呪いのセリフが次々と口をつく。今日は久しぶりにオフだから会おう、という誘いに乗ったのが間違いのもと。充分承知している。
「あの野郎、いい加減に……」
思い起こせば、高校時代は毎日がこの調子だった。あいつに振り回された日々は卒業と同時に終わった、わけではない。
同じ関東圏に進学できたのは嬉しかったが、向こうは強豪チームを擁する大学へスポーツ推薦、オレは一般入試で入った私大の同好会でちまちまとバスケを続けている有様。
入学当初、「陵南って神奈川の名門じゃん」のあとに「どうしてあっちの大学に行かなかったの?」と言われたことは数え切れず。それでも卑屈にならなかったのは大学バスケ界のスーパールーキーと友達だという自負があったから。虎の威を借る何とかと言われようが構わない。
「……や〜、悪い。電車遅れちゃってさ」
相変わらずのノンビリした口調で言い訳しながら現れたのはパーカーにジーンズ姿の、特徴的なツンツンヘアーの男。長身イケメンの登場に、改札付近が騒然となる。
「電車は定刻通りに動いています、遅延放送はありません。発車が遅れたんじゃなくて、おまえが乗り遅れたんだろうが」
「そうか、そうとも言うなぁ」
「ったく、大学生になったんだから少しは成長して大人に……」
「大人の階段登る〜」
「誤魔化すなっ!」
ツンツン頭は肩をすくめるポーズをとると、
「またそうカリカリする。おまえの方こそ大人になったらどう?」
などとほざいた。
「誰のせいでカリカリしてると思ってんだ? おまえの無神経なところだよ!」
短気で喧嘩っ早いと評されていたオレだけど、高校を卒業してからは丸くなったと、母校の応援に行った時に植草や福田に言われたし、後輩の相田には人が変わったとビックリされたほどだ。つまり原因はこいつと関わる時間が少なくなったからであり、オレの精神から健康状態にまで影響を及ぼす存在と断言していい。
「だいたい、遅れるなら遅れるで連絡よこせよ。何のためにスマホ持ってんだよ」
「いやー、これ、使い方よくわかんなくてさ。オレって機械音痴なんだよね」
「進〇十郎かよ」
しまった、知る人ぞ知る、知らない人は知らないツッコミネタだ。
「まあまあ、落ち着いて。それよりどこに行く?」
「どこへって、どうせまた彦一たちをからかいに学校へ行こうって言うんだろ。それともカフェかマッ〇でダベリか。どこでもどうぞ、御供しますから」
半ば投げやりに応えると、彼は目を丸くした。
「そうやって言ってくれるの、やっぱりおまえだけなんだよね」
それから嬉しそうに続けた。
「オレさ、ゆくゆくはNBAに挑戦したいって言ってただろ? それ、在学中になるかもしれない。そん時は御供としておまえも来いよ」
「はあ? オレ程度がアメリカで通用するわけないだろ」
「だったら語学留学でもしてさ」
「私立の学費工面してもらうのがやっとなのに、そんな金どこにあるんだよ」
「一緒に来て欲しいんだ、宏明に」
「ひろ……」
ファーストネームで呼ばれたのは初めてかもしれない。戸惑うオレは何も言い返せなくなってしまった。
「そうか。オレがスター選手になってがっぽり稼げば、おまえの留学の資金出せるな」
「……ま、またそうやって調子のいいことを」
「まあ、とりあえず今日はス〇バにしておくか。でも、さっきのは本気。約束するから」
差し出された右手は大きくて温かかった。